必見!台湾の歴史ドラマ「斯卡羅Seqalu: Formosa 1867 」(3)第10話~第12話

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主な登場人物

タイトルの「斯卡羅Seqalu:Formosa1867」の、斯卡羅Seqalu(スカロゥ)とは当時原住民が支配していた台湾南部の地域名。1867は、この年に起きた斯卡羅の原住民が、難破したアメリカ商船のローバー号の船員たちを侵略してきたと勘違いして、殺害した事件を表しています。

日本語の説明がなく、誰が誰か分かりにくいので、主な登場人物をまとめてみました。
役名と読み方を書いてみましたが、台湾語、客家語は発音が聞き取れないところも多いので、普通語の発音です。また、名前があるのに名前を呼んでない(例えば「叔父さん、叔父貴」のように)場合もあります。
※画像は公式のFacebookからです。

ストーリーの中心人物

蝶妹(Tiap-moe ティアメイ/ティアモイ) 英語では「Butterfly」と呼ばれている。原住民の母が、客家人の父と駆け落ちしたため部族からは仲間と認められない。自分は客家人だと言うが、台湾人や客家人からは原住民だと差別される。パイワン語、客家語、台湾語、英語を話すのでアメリカ領事の召使、通訳として、原住民の住む山へ嫌々案内させられる。
族長の一族なので、後半、「貴族Royalty」と字幕がついている。
出演:溫貞菱(ウェンジェンリン)

Charles Le Gendoure(ル・ジャンドル 李仙得(リィシエンドゥ))アメリカの市民権を持つフランス人で福建省厦門(アモイ)のアメリカ領事。厦門から台南府にアメリカ人船員の捜索を要請に来た。やたらに、「秩序と文明を教えてやる」という上から目線で台湾人、原住民に接する。召使に背広を着せて、ナイフとフォークで食べ物を食べさせて「これが文明だ」みたいなことを言っている。(笑) 出演:法比歐(ファビオウ

William A. Pickering(ピッカリング)イギリス人貿易商。
もと蝶妹の雇主。台湾に愛着がある。ルジャンドルには反感を抱くが、中国語、台湾語の通訳として捜索に同行する。ただ、召使いの蝶妹に「薬局に仕事を紹介してやったんだから紹介料よこせ」みたいなこと言って、酒代をもらったりしている。(セコぃ) 出演:周厚安(チョウホウアン)

原住民の族長

原住民(パイワン族)は18の部族の集合体で、各部族長の中で現在は卓杞篤(トキトウ)が族長。彼らが治めているのが台湾の南部の斯卡羅Seqalu(スカロゥ)、現在の恒春あたりです。

卓杞篤(Tok Kitok トキトウ)
豬朥束(ジュラオシュ?)社(族)の族長。また原住民18部族全体の斯卡羅の族長でもある。蝶妹の亡くなった母、瑪祖卡(マツカ)は妹。
勇者として戦も辞さないが、アメリカ領事との間で最後には条約を結び、友人となる。
出演:查馬克・法拉屋樂(チャマク・ファラウラ) 
この人は原住民で、俳優ではなく小学校で伝統歌謡を教えている教員だとか。残念なことに2021年8月19日42歳の若さで亡くなりました。
追悼音楽会の様子です。

伊沙(Isa イサ)
射麻里社(族)の族長、斯卡羅では卓杞篤に次ぐ地位にある。卓杞篤が台湾人に貸した自分の領地「統領埔(TongLingPu)」を漢人から取り返そうと思っている。婚約していた卓杞篤の妹、瑪祖卡(マツカ)は漢人と駆け落ちした。卓杞篤とは意見が合わないこともあるが最後には部族のために立ち上がる。
出演:雷斌·金碌兒(レイビン・ジンルゥァ) 
この人も、実際の原住民で陶芸家です。

※ 原住民という言い方は、元から住んでいた住民という意味で彼ら自身が選んだもので、差別的な意味合いはありません。ただ、劇中では、西洋人や閩南人、客家人も裏では結構ひどい言い方でパイワン族のことを呼んでいるそうです。

※中国語の字幕で、原住民のことは、生番(セイバン)と表現されていますが、社寮の平埔族は熟番(じゅくばん)と表示しているときがあります。生番は山に住んで清に服従していない原住民。熟番は平地に住んで、漢人化している原住民のことです。

原住民支配の山の麓に住む平埔族、閩南人、客家人のグループ

原住民からは、台湾人、客家人はひっくるめて「Han Chinese」「漢人」、西洋人は「Blue Eyes」「藍眼晴」と字幕に表記されています。

水仔(Shui-A シュイア)
台湾人と原住民のハーフで平埔族(平地の原住民が漢人化したグループ)のリーダー。原住民と漢人の両方から「土生仔=混血」と蔑まれている。原住民のために交易をして、原住民の領地「社寮(Sia Liao)」を借りている。3グループで1番弱小。漢人のグループ内では不利なので、原住民側につくことで、柴城や保力に対抗しようとする。原住民と客家人、台湾人の通訳もする。自分達の借地をより良い「統領埔(Tong Ling Pu)」にしてもらおうと思っている。後半は清国軍と原住民の板挟みになることも。
出演:吳慷仁(ウーカンレン)

朱一丙(Zhu Yi-bing ジュ イィピン)
福建省から渡ってきた閩南人(台湾人)の村「柴城(ChaiCheng)」の長。3グループで最大。原住民からも、清国からも独立してして支配を受けたくないと思っている。進軍してきた清国軍に駐屯地を提供して原住民からの攻撃を牽制しようとする。出演:雷洪(レイホン)

林阿九(Lin a-jiu リン アチョウ) 劇中ではアガァと呼ばれています。原住民の領地「保力(Bao Li)」の土地を借りている客家人グループの長。
客家人は大陸で定住地を持たず、台湾に流れてきた。客家とはよそ者の意。朱一丙とは争いながらも、一緒に組んでよりよい場所「統領埔(Tong Ling Pu)」を原住民から借りたいと思っている。しかし柴城の朱一丙に、川の水を上流で止められて困っている。出演:夏靖庭(シアジンティン)

※ 言語について、朱一丙は閩南語(≒台湾語)のみを喋っています。林阿九は、主に客家語を。閩南語も。第1話では伊沙(イサ)とはパイワン語を話していた。水阿は、閩南語、客家語、パイワン語を話している。
朱一丙の閩南語と比較して聴き比べると、客家語との違いがわかると思います。
清国軍の劉明燈将軍は、北京官話だと思います。

周りを取り囲む出演者たち

阿杰(A Jie ) 蝶妹の弟。劇中では「アカァ」と呼ばれているように聞こえる。父親の林老実と、賞金をもらうために船員を台南府に連れて行く途中で父親は何者かに殺される。幼少時に別れた蝶妹と再会するが、街の生活に馴染めずに最後は山に戻る。卓杞篤(トキトウ)の娘の烏米娜(ウミ)に好意を寄せられて、斯卡羅の戦士になるべく訓練をさせられる。
出演:黃遠(フアンユエン)

劉明燈将軍(Liu ming–deng リュウ ミンドン)
台湾府清国軍の将軍。アメリカ領事と一緒に船員の捜索に行くことになる。領事のルジャンドンは原住民に秩序や文明を教えると言うが、劉将軍はそんなことはできないと思っている。本心では原住民の征伐をしたいと思っている。
出演:黃健瑋(フアンジエンウェイ)

道台(Dao Dai ダオダイ) 清国台南府の知事。道台は多分職名。賄賂に目がないと言ったいかにもと言う感じの役人。原住民との争いなどには関わりたくないが、船員救助の賞金の6割をくすねようと画策したりする。
アメリカ領事に「北京の朝廷に報告する‥」と言われて態度急変、劉将軍に捜索隊を出すように命令を出す。領事にもアドバイザーとして同行を許す。
出演:王振全(ワンジェンチュエン) この人は中国漫才(相声)の漫才師で、Youtubeで見ると日本の漫才の阪神巨人の巨人のようなスタイルと思いました。

人物相関図

部族、漢人の集落の位置関係

3つの集落、原住民、の位置関係が分かれば理解しやすくなると思います。

下の地図と合わせて見ていただくと、社寮、柴城、保力の3つの集落は5~6Kmの間で角突き合わせて生活していたことがわかります。

山は原住民の領地なので社寮、保力は平地の狭いところを原住民から借りて暮らしています。

3集落共、水の比較的豊富な統領埔を原住民から借りたいと思っています。

現在は保力が借りていますが、その借用期間がまもなく切れます。

同じ物ですが、GoogleMapで、正確な距離感がよく分かると思います。



第10話~第12話 風土病、海の彼方から来た、条約

第10話 The Plague (疫病)

清国軍は原住民の山への侵攻をすすめるが、風土病により兵士の多くが倒れ、気力や体力を失って行く。

卓杞篤は、部族会議で清国軍との戦いを決めようとするが、伊沙の反対で過半数の部族の賛成が得られない。それで山を降りてまず劉将軍と会うことにする。

領事のルジャンドルは卓杞篤に、犯人を差し出すように要求する。卓杞篤は犯人は自分だ言い、部下の不始末は部族長である自分のせいだという。

結局交渉は決裂し「それでは戦おうではないか」となった。ルジャンドルは「もし戦えば原住民は全滅するぞ」と言うが、卓杞篤は「どちらが全滅するかは、先祖の霊が決めることだ」と言い返す。

蝶妹は、兵士たちと同じ風土病にかかり重体となる。ルジャンドルは、彼女の母の墓を訪れ彼女の呪いを解いてくれるように祈る。

第11話 The Back of the Ocean (海の彼方)

柴城の朱一丙は、清国軍が村に入るのを拒み、原住民を追い払うかそうでなければ撤退して欲しいと要求する。劉将軍は原住民の住む山を焼き払うことを決意し油を集めさせる。

ルジャンドルとピッカリング、阿杰(蝶妹の弟)は、昔オランダ人が原住民の村に行くために通った川の跡を遡っていく。突然の原住民の待ち伏せ攻撃で、ルジャンドルは負傷し捕虜として連れ去られる。

ルジャンドルが目を覚ますと、そこは原住民の村で目の前には卓杞篤がいた。

第12話 The Treaty (条約)

油が清国軍の駐屯地に集められた。劉将軍は柴城と保力に原住民の山を焼き払う手助けをするように命令する。

卓杞篤は、清国軍と戦うために山を降りていたが、蝶妹と阿杰は劉将軍が山を焼こうとしている計略を伝える。卓杞篤は、これは罠ではないかと疑うが、それならと蝶妹が自分が先頭になり其の場所に行くと言い。おかげで保力の村人が運んできた油は、原住民のものとなり、山を焼く計画は防がれた。

原住民と清国軍の戦いが始まり、双方に被害がでるが領事のルジャンドルが中に入り戦いは終わる。

卓杞篤とルジャンドルは、将来同様なことが起きないように難破船の乗員が赤旗を掲げて上陸した場合は、殺害したりせずに漢人に引き渡すなどの取り決めをする。

蝶妹は許されて、原住民の族長の一族として山の村に帰ることを許される。

そして、思いもしなかった結末へ。



後日談 宮古島島民遭難事件と日本軍の台湾出兵

この話には後日談として、日本も関わってくる。(wikipedia参照)

事件は1867年のローバー号事件からわずか4年後の1871年に起きた。琉球王国の首里に年貢を収めに行った帰りの宮古島の住民66名を乗せた船が、遭難して台湾南東部に漂着した。

その内54名が原住民に殺害され、生存者は12人だったと言う。

日本政府は清国に抗議するが、原住民は「化外の民」(国家統治の及ばない者)であるといい、そのために日本政府は1874年原住民征伐のために約3000名の軍を送ることになった。

戦いの結果、斯卡羅の原住民は降伏した。その時の日本軍を指揮したのは西郷隆盛の弟、西郷従道(つぐみち)だった。

当時の写真に、西郷の両側に卓杞篤(トキトウ)と伊沙(イサ)が写っている。

更に、この時台湾出兵を強くすすめたのがアメリカ領事だったルジャンドルで、彼は日本外務省の顧問として雇われた。彼は、ローバー号事件の時に測量した地図などの資料を日本に提供し、日本軍はその地図にもとづいて、社寮に上陸し、柴城から統領埔を経由して進軍していった。

また宮古島島民の12人の生存者は、統領埔の林阿九にかくまわれ、社寮から船で台南府へ送られ、福建省経由で琉球に帰還した。

さて、この出兵での日本軍の戦死者は12名だった。ところが、劇中でも清国軍兵士がバタバタと倒れていた風土病のマラリアで、日本軍兵士も3000名の内561名が亡くなっている。

この後、歴史は日清戦争、台湾の割譲(1895~1945の日本の統治)、そして大東亜戦争へと続いて行くことになる。

まさかこんなふうに日本との関連が出てくるとは思いもしなかったが、「斯卡羅Seqalu:Formosa1867」を十分楽しめた1週間だった。

ぜひ12話全部お楽しみください。


必見!台湾の歴史ドラマ、「斯卡羅Seqalu: Formosa 1867 」(1)第1話~第3話
必見!台湾の歴史ドラマ「斯卡羅Seqalu: Formosa 1867 」(2)第4話~第9話

(2021/10/22)(2021/10/26)



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